今日はまた押入れにしまってあるCD収納箱を取り出して、少しCDの入替を行った。このところやや熱心に購入が続いたので、部屋に与えられている収納スペースが窮屈になって来た。かといって押入れの収納段ボール3箱も一杯になっている。とうとう、古いパソコンソフトなどを入れてあった段ボール箱を解放し、新たに第4のCD収納箱として働いてもらうことにした。と、部屋に出してあるもので、だぶつき気味だったものが一気にそこに流れ込み、早くも半分が埋まってしまった。おかげで部屋に少し余裕が生まれ、また購入意欲に火がつきそうである。まあ蒐集とはこういうものだ。
以前は、買ったものについて確実に記憶している自信があったのだが、買ったはずのものがなかったり(売ってしまったことを忘れている)、少し前に注文しかけた作品を箱の中から発見して焦ったり(一度にたくさん買いすぎてほとんど聴いていなかった)と、自分の記憶にやや怪しいところが発覚したりして、あまり有難くない経験までさせてもらった。
余談だがCDやDVDといった光ティスクは決して永久的なものではなく、寿命というものがあるらしい。取扱いが粗雑で傷がつけば、ディスクの劣化はそれだけ早くなるのはわかるが、特に何もしなくても品質の悪いものは20年前後で劣化が起こるという話もある。僕が最初のCDを買ってからもう20年以上経つ。確かに、初期の輸入CDには品質の悪いものがあった。致命的なのは、ディスクの一番内側の部分に傷がついたりすることで、ここがやられると、プレーヤに入れても再生できなくなる。何曲入りで全部で何分という情報が表示されなくなるので、プレイヤーがどう再生していいかわからなくなるのだ。
今週はいろいろな音楽を聴いた。特に深く聴いた作品とアーチストが他にあったのだが、それについてはもう少し時間をおいてから書きたいと思う。代わりにといっては何だが、今回は久しぶりに、最近なかなかいい出物にお目にかかれない、サックスの作品を取り上げようと思う。もちろんこれは今日の入替作業で長いお蔵入りから解放されたものだ。少し前に、最近いいサックスの作品がないなと考えたときに、ふと思い出したのだ。
この作品は、イギリス人サックス奏者アンディ=シェパードの記念すべき初リーダー作である。これが発表された1987年は、彼とコトニー=パインという2人のサックス奏者が、イギリスから相次いで衝撃的なデビューを飾った年である。イギリスという国は、それまではジャズとは若干縁遠い国であったが、これらの作品を機にそのシーンは急速に世界の注目を集めるようになった。同時に、当時英国で急速に成長しつつあったクラブミュージックがジャズと融合し、今日ではジャズという言葉が、むしろそちら側の言葉となってしまった感さえある状況になっている。昔ながらのジャズファンはそういう現状を嘆くのかもしれないが、いわゆるモダンジャズの現状を見るに、これはこれで必然的な流れだったと思う。
内容はいわゆるモダンジャズの延長としてはかなりかけ離れたもので、ジャズをベースにもっと視野の広い進歩的な音楽が一杯に詰まっている。先に紹介したジョン=スコフィールドの最新作でベースを演奏しているスティーブ=スワローがプロデュースを担当しており、他に最近はいまひとつだがそれでも現在を代表するサックス奏者マイケル=ブレッカーの兄、ランディー=ブレッカーがトランペットで数曲参加している。アンディはソプラノとテナーを中心に、とてもメロディアスで情熱的な演奏を繰り広げている。
このアルバムは発売当時は大変な好評を博したが、続くセカンドアルバムでは、この路線は早くも破綻し始めたように僕の耳には聴こえた。そしてそのアルバムはもう僕の手元には無い。いま考えてみれば、この路線はウェザーリポートなどに代表される、ジャズをワールドミュージックの方向に発展させたものだったのだが、結局そのやり方はスタイル的な落着点を見いだせないまま、中途半端な内容になって音楽の方向性としての流れをつくれないまま分散してしまったように思う。
その後、僕の興味はヨーロピアンフリーとハウスミュージックに向かい、彼の存在はいつの間にか忘れてしまっていた。同時期にデビューしたコトニーは、ハウスに取り込まれた新しいジャズの波にのって、いまやクラブジャズシーンの大御所である。現在でもDJを引き連れて東京のブルーノートに時折出演している。まあ、そのハウスミュージック自身も、さらに早いスピードで様変わりしているわけだが。
アンディがその後どうしているのか気にかけたこともなかったのだが、彼のサイトを見る限りは、いろいろな活動を続けながら、現在までリーダー作も発表し続けている。いまのところあまり聴いてみようという気にはならないが、カーラ=ブレイなど新しい音楽の先端にいる人たちと演奏活躍をしているようである。
おそらく結婚する際に、それまで住んでいたアパートを引き払う時に箱詰めして以来、ほぼ6年ぶりに箱から出して聴いてみたCDだったが、最初、プレーヤがディスクを認識してくれなくて少々焦った。確かにもう17年が経過したディスクであり、この前聴いたときにはどういう扱いをしたのか、盤面もずいぶん汚れていた。ディスクを水で洗ってきれいにしてやると、無事に再生することができた。
就職で上京して、はじめて渋谷にCDを買いに行ったときのことを思い出し、バブル景気に沸いた当時の世相を思い出しながら演奏を楽しんだ。たぶん次にCDを整理するときには、また箱の中に戻ることになると思うが、少し立ち止まって一息入れるような気分で楽しめた作品である。たまにはこういう聴き方をするのもいいものだ。
Andy Sheppard- Jazz musician and composer 公式サイト
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