インターネットのおかげで、情報を探し出すテクニックを少し身につけると、本当にいろいろな音楽を手に入れて聴くことができるようになった。新しいキーワードを手に入れれば、それをもとに検索するとまた新しい出会いをいとも簡単に得ることができる。いろいろな人が言っているように、交通手段の発達が物理的な移動に関する可能性を高めたのに対し、インターネットは何かを探すことに関する可能性を飛躍的に高めてくれた。別の言い方では、出会いの場やきっかけを増やしてくれたということもできるだろう。
自分でもそのことがとても楽しくなり始めた頃、たぶん結婚するよりも前だったと思うが、そうは言ってもたぶん自分の興味という観点から、こちらから積極的にアプローチすることはないだろうな、と思っていた音楽の分野が3つあった。それは、声楽、演歌、そして純邦楽の3つだった。まあもちろんこれは当時の僕の偏見だったわけで、いまはそんなことはなくなってしまった。あえていうなら声楽のなかでオペラだけはいまだにCDを買ったことがないくらいだろうか。そして、最近はもっぱら尺八がブームである。この1週間の間に既に5つのCDを入手し、うち4つはネットでの購入である。川崎や渋谷のお店を歩き回っても、本やCDを見つけ出すのは容易ではない。僕のような人間にとっては、インターネットはこのうえもなくありがたい道具である。
前回のろぐで、海童道祖の作品を紹介した。そのCDを購入した際、同時に購入したのが今回の作品、横山勝也の作品集である。前回も書いたように、この作品はもともと日本のレコード会社RCAビクターが製作したものを、ドイツの現代音楽専門レーベルWERGOが海外での販売権を買って、リリースしているものである。日本国内では、「尺八の遠音〜横山勝也尺八古典名曲集成1、2」というタイトルのLPレコードで、1978年にリリースされている。ともかくこの手の情報は日本国内のインターネットサイトでは極めて不足しており、また十分な整理がなされていない。却って海外のサイトからの方が良質な情報を得られるというのは、なんとも皮肉な話である。
横山勝也は現時点でご存命の演奏家としては最も重要な人物の一人である。彼の生い立ち等については他のサイトにあるのでそちらをご覧いただくとして、彼の名が直接邦楽に興味を持たない人、とりわけ海外にも知られているのは、日本の現代音楽家、武満徹の作品「ノヴェンバーステップス」他での演奏に負うところが大きい。それが発表された1960年代半ば以降、尺八は海外での人気を高める一方で、日本国内での人気は一般的に見ていまひとつというところではないかと思う。それは、先ほども書いたように、実際に街のCDショップや本屋さんで関連した商品を探してみればすぐにわかることである。
ただ、もちろん残念なことであるが、マスメディア的な人気は博しても短命に終わるもので、最悪の場合本質を疲弊させるだけで終わってしまう危険性もあるから、個人的にはこういうものはインターネット的な意味での人気、草の根的にしっかりと支えられた存在とでも言えばいいのか、となって欲しいと思っている。その意味で、海外ではそうしたものが定着つつあることは心強いと思う。
まったくの偶然だったとはいえ、海童道の作品とこの作品を同時に購入した僕はラッキーだったと思う。海童道の方が、ある意味アヴァンギャルドな人間的魅力に満ちている一方で、この作品では伝統的な尺八の魅力を堪能することができるからだ。その対比がとてもよく理解できた。好みの問題はあるだろうが、僕は横山勝也の演奏については、純邦楽をほとんど聴いたことのない人でも、一度聴けばすぐに心地よく感じられるのではないかと思う。
思いがけず純邦楽の作品が続いてしまった。これとは長い付き合いになりそうだ。
Internatinal Shauhachi Societyにある横山勝也の略歴とディスコグラフィー(英文) 大変よく整理されてます。日本語ではこういうサイトはありません。
Wergo ドイツの現代音楽専門レーベル
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