10/08/2010

街角のブランデー

金曜日の朝、ある駅で電車を降りて歩いていると、駅近くのコンビニの前で、中年の男が2人で座り込んで楽しそうに談笑している。いずれも周囲を忙しそうに歩いている出勤途中のサラリーマンとはおよそ異なるラフないでたちだが、別にホームレスとかいうわけではなさそうだ。

彼等に目線が流れたのは、あまりにも楽しそうに豪快に笑いあっていたから。地下鉄の駅も近い街角の喧騒のなかで、黙々と歩く周囲の人たちからすると、まだ陽がさしていないにもかかわらず、そこだけがそれはそれは浮いた光景だった。

僕の目を(そしておそらくは他の多くの周囲の景色に敏感な通行人の目も)釘付けにしたのは、2人の間に置かれたニッカの安いブランデーのボトルだった。そこのコンビニで買ったものなのだろう。ボトルは既に半分くらい空いていたが、赤味を帯びた琥珀色の液体が独特の存在感で輝いていた。

2人の間にあるのはボトルだけ。グラスはおろか紙コップすら見当たらない。おつまみらしいものも見当たらない。2人で替わるがわるラッパ飲みなのか、それとも、色褪せた赤いニット帽を被った男か、ほとんど描き様もないほど特徴がないネズミ色の服を着た男か、いずれかのマイボトルなのか、残念ながらそのまま過ぎざるを得ない通りすがりの僕には知ることはできなかった。

こんな街中で、ある秋の金曜日午前7時半の風景としては、久しぶりに刺激的でイカしたものだった。

それから2時間ほどたった後に、用件を済ませた僕が同じ場所を逆向きに通った時には、2人の姿はもうなかった。彼等が座っていた場所は、秋の暖かい日差しにさんさんと照らされていて、何の変哲もない場所に戻っていた。その時そこに目をとめた人間は、おそらく僕一人だけだったに違いない。

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