5/14/2011

ジャズ ピアノの最先端2作

連休前から気に入って聴いている、2つのジャズピアノ作品をご紹介しておきたい。

最初はマシュー=シップの最新作"The Art of Improviser"。CDでは2枚組になっていて、1枚目がピアノトリオ、2枚目がソロピアノという内容。僕はアマゾンのMP3ダウンロードで購入した(1100円というお買い得価格になっている)。

マシューはデイヴィッド=S.ウェアのクァルテットにおける演奏が印象に残るもので、ソロやトリオの作品を聴いてみたいと思っていたところに、ちょうどこれが発売されたので飛びついた次第だ。自信たっぷりのタイトルからうかがい知れる通り、内容はかなり素晴らしい。

いずれもライヴ演奏でのワンセットを丸々編集なしで収録したものと思われる。なぜなら曲と曲が切れ目なく演奏されているから。トリオもソロもそれぞれ1曲ずつスタンダードナンバー(トリオは"Take the A Train"、ソロでは"Fly Me to the Moon")が入る以外は、すべてマシューのオリジナル作品だ。

オリジナル作品につけられたタイトルがどこか工学的なものを連想させるように思うのだが、マシューのピアノは表面的にはフリーな様に聴こえて非常に構造的な美しさを感じさせる。特にソロ演奏の方ではそうした彼の美学が圧倒的なまでに溢れ出す。

一方、トリオの方ではその世界が立体的な姿で展開される。特に2曲目の"3 in 1"はピアノテーマのみの演奏にリズムがパルスで絡む内容で、個人的にはこのアルバムのベストテイクだと思っている。後半のドラムソロも、1曲目の後半で大きくフィーチャーされるベースソロとともに聴きごたえ十分である。トリオとソロを通して聴いても何ら退屈することのない素晴らしさだ。

もう1つの作品は、少し以前のものになるが、ブランフォードのグループなどで活躍したベーシスト、ロバート=ハーストが2002年に発表したリーダー作"Unrehurst Volume 1"である。最近になってこの続編が発売になるらしく、その情報を知るなかから本作の存在を知った。こちらもアマゾンのダウンロードで購入(やはり1050円という価格はお買い得だ)。

こちらはブランフォードの音楽に象徴される様な、ある意味でメインストリームなジャズの現在形とでも言えばいいだろうか。高いテンションを持ちながら、正確かつ安定感のあるモンスターマシンという感じ。そのエッセンスが凝縮されたかの様な1曲目"Mr. Thomas"を聴いただけで、僕はあっさりノックアウトされてしまった。まさに失禁もののスリルである。

この"Unrehurst"はユニットとして結成されたもので、ロバートが起用したピアノとドラムはいずれも当時は新人に近い若手だったそうだ。それにしても彼らの演奏は恐るべき内容、最近あまり聴いていなかったのだが、アメリカのジャズの底力を見せつけられる。これは最近発売になったVolume 2の方も手に入れないわけにはいかないだろう。

ということで、久しぶりに王道的ジャズピアノの最先端に位置する作品をじっくり聴いた。やはり新しいものはいい。時代の流れとは別にあるジャズという音楽そのものが突き進む姿の力強さを感じた様に思う。いずれも素晴らしい作品です、是非ご一聴あれ!

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