4/13/2008

コンチェルト

なんとなく重苦しい春。新しい将来に向けて意気揚々と行きたいところが、足下がぬかるみ。周囲の景観もぼやけてしまっている。

会社生活を始めて20年がたった春。200枚のCDを持って上京したあの日から、結局のところここまで大きな転機らしいものはなかったように思う。両親が逝き、妻と結婚し、職場を異動しても、僕は僕のままだと感じている。もしかしたら、感じていられるというのが正しいのかもしれない。

仕事で引き受けていた会社のブログをこの4月でとうとう閉鎖することにした。このろぐとは異なる意味で、ずいぶんと文章を書く勉強にはなったのだが、結局のところ、うまく続けることはできなかった。いま考えると、ブログの企画をきちっと決めていなかったのがまずかった。更新のタイミングにしても、取りあげるテーマもあまりちゃんと決めず、どうとでもできるようなタイトルをつけてしまったのがいけなかったようだ。

一方で、月刊誌から少しだけお金をもらって書いている連載があり、どういうわけかこれが続いて3年目に入ってしまった。いまのところ雑誌に掲載された後にウェブでも公開されているのだが、6月からは紙のメディアがなくなりウェブのみになるらしい。これを機に打ち切りになるのかなと思っていたら、1回あたりの分量を少し減らして、月2回にできないかと編集部の人から打診された。

連載していること自体にはっきりとした手応えがあるわけではない。見ず知らずの人から「読んでますよ」と言われたこともないし、書いた内容について誰かから批判や賛辞をいただいたこともない。それなのにお金を払ってでもそれを続けて欲しいと言われるのが、なにかちょっと気味悪くさえ感じられる。それでも書くことを続けさせてくれるわけだから、これは何か目に見えない期待であっても応えなければいけないなと思った。

週末、妻が泊まりがけで出かけてしまったので、久しぶりにステレオセットの前でゆっくり酒を飲みながら音楽を聴いて過ごしている。ここ最近は、聴くものがかなりバラバラなのだが、いまは富樫雅彦と菊地雅章がデュオで録音した作品「コンチェルト」を聴いている。

ずいぶん前に誰かがこの作品のことを雑誌か何かで絶賛していて、気になっていたのだがなかなかお店で巡り会うことがないままの状態が続いた。それが3、4年ほど前に渋谷の中古屋で偶然に見つけ、それ以来これは僕の密かな愛聴盤となっている。

2枚のCDに収められた富樫のパーカッションと菊地のピアノによる14曲の演奏は、比較的音数の少ないゆっくりとした深い世界を形作って展開してゆく。絶えず同じテンポを保つことなく、様々に流れを変えながらあるしっかりとした時間と空間を作り上げてゆく。iPodのような移動中に聴く音楽ではなく、家の中でじっくりと味わたい音楽である。個人的には、Disc2の1曲目"Riding Love's Echoes"が特に気に入っている。

そろそろ再発されてもいいのではないかと思うのだが、なぜか未だに廃盤のままである。都内の中古CD屋で何度か見かけたことはあるものの、結構レアな状況になってしまっているのが残念な作品だ。もし見かけることがあったなら、それはもう運命に感謝して即買いだと思っておいた方がよい。

出会ってしまったら何でも当たり前のように感じてしまうのはよくないことだ。一期一会は難しい。

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